増え続ける外国人労働者の受け入れ(雇用)の現状と課題点

日本は少子高齢化社会となり、生産年齢人口が減少の一途を辿っています。そのため慢性的な人材不足によって、倒産する企業も登場するなど人材不足は深刻な問題となっています。このような問題を解決する方法の一つが、外国人労働者の受け入れなのです。
この記事では、増え続けている外国人労働者の受け入れ(雇用)の現状と課題点について詳しく解説します。企業の経営者の方や人事担当者の方は、ぜひ、この記事を参考にしてみて下さい。

外国人雇用の現状 在留資格(外国人雇用)の種類 外国人雇用のメリット・デメリット
外国人雇用を考える際のポイント 外国人労働者の雇用後の対応 外国人雇用の課題点
外国人雇用に関する法律 入管法改正案の閣議決定 外国人雇用が進んでいる企業事例

FOREIGNERS外国人雇用の現状

まずは、外国人雇用の現状を把握しましょう。

日本で就労する外国人のカテゴリーと数

日本で就労する外国人のカテゴリーと総数は次の通りです。

就労目的で在留が認められる者 専門的・技術的分野の在留資格保有者 約27.7万人
身分に基づいて在留する者 定住者や永住者、日本人の配偶者 約49.6万人
技能実習 開発途上国から技能を修得しにきた者 約30.8万人
特定活動 ワーキングホリデー、スポーツ選手などの特定活動 約3.6万人
資格外活動 留学生のアルバイト 約34.4万人
総数 約140万人

総在留外国人数の推移と今後の予測


(出典元:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況のまとめ)

国内における総在留外国人数は、平成20年のリーマンショックから平成23年の東日本大震災後にかけて一時減少傾向にあったものの、平成29年末現在、約256万人となり、過去最高を更新しました。対前年増加数は約18万人(対前年増加率7.5%)で5年連続の増加となりました。外国人労働者の増加の要因は下記の通りですが、今後も増えていく見込みです。

【増加の要因】
・政府が推奨している高度外国人材や留学生の受け入れが進んでいること
・雇用情勢の改善が着実に進み「永住者」や「日本人の配偶者」等の身分の基づく在留資格の就労が増えていること
・技能実習制度の活用が進んでいること
・日本国内の生産年齢人口が減少しており、外国人労働者の積極的な採用が進んでいること

国別・都道府県別・産業別の外国人労働者

国籍別や都道府県別、産業別の外国人労働者の割合などについても解説します。

国籍別の外国人労働者の割合


(出典元:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況のまとめ)

国籍別の直近の外国人労働者の人数を確認すると、中国が最多で372,263人で、外国人労働者全体の29.1%を占めています。次いで、ベトナムが240,259人(同18.8%)、フィリピンが146.798人(同11.5%)、ブラジルが117,299人(同9.2%)となっています。とくに、ベトナムは対前年同期比で68,241人(39.7%)と大幅に増加している状況です。

都道府県別の外国人労働者の推移


(出典元:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況のまとめ)

外国人労働者の都道府県別の割合は、東京が27.8%を占め、次いで愛知が8.0%、大阪が6.6%、神奈川6.5%、埼玉4.7%となっています。

業種別の外国人労働者の割合


(出典元:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況のまとめ)

産業別にみると、「製造業」が 22.2%を占め、次いで「卸売業、小売業」が 17.1%、「宿泊業、飲食サービス業」が 14.3%、「建設業」が 8.6%となっています。製造業の事業所の占める割合が前年と比較して減少している一方で、建設業は増加しています。

FOREIGNERS在留資格(外国人雇用)の種類

在留資格は33種類あります。またその中で、企業が外国人労働者を雇用する場合に特に押さえておきたい4つの在留資格について解説します。

在留資格の種類


(出典元:厚生労働省)

外国人労働者を雇用する前には、就労が認められる在留資格を所持しているかを確認して下さい。2019年現在、在留資格は33種類あります。人事採用担当者は、就労が認められている在留資格を保有しているのか確認しましょう。

特定の就労が認められる在留資格

次の22種類の在留資格に関しては、就労できる仕事内容が決まっていますが就業が可能です。

1 外交 外国政府の大使、公使等及びその家族
2 公用 外国政府などの公務に従事する者及びその家族
3 教授 大学教授等
4 芸術 作曲家、画家、作家等
5 宗教 外国の宗教団体から派遣される宣教師等
6 報道 外国の報道機関の記者、カメラマン等
7 高度専門職1号(特定技能) 高度な専門的な能力を有する人材と法務省が認めた者
8 高度専門職2号(特定技能) 日本に利益をもたらす能力を有する人材と法務省が認めた者
9 経営・管理 企業等の経営者、管理者
10 法律・会計業務 弁護士、公認会計士等
11 医療 医師、歯科医師、看護師等
12 研究 政府関係機関や企業等の研究者等
13 教育 高等学校、中学校の語学教師等
14 技術・人文知識・国際業務 機械工学等の技術者
15 人文知識・国際業務 企業の総合職、通訳、エザイナー等
16 企業内転勤 外国の事務所からの転勤者
17 興行 俳優、歌手、プロスポーツ選手等
18 介護 介護職
19 技能 外国料理の調理師、スポーツ指導者等
20 技能実習1号 法務大臣が指定した期間(1年以内)働ける技能実習生
21 技能実習2号 法務大臣が指定した期間(2年以内)働ける技能実習生
22 技能実習3号 法務大臣が指定した期間(2年以上)働ける技能実習生

就労の可否は指定される在留資格

留学などで来日しているが、特定活動の在留資格が得られれば、1週に28時間以内であれば労働できます。

1 特定活動 外交官等の家事使用人、ワーキングホリデー等

就労が認められない在留資格

次の5つの在留資格においては、就労が禁止されています。

1 文化活動 日本文化の研究者等 観光客、会議参加者等 大学、専門学校、日本語学校等の学生 研修生 就労資格等で在留する外国人の配偶者、子
2 短期滞在 大学、専門学校、日本語学校等の学生
3 研修 研修生
4 家族滞在 就労資格等で在留する外国人の配偶者、子

身分・地位に基づく在留資格(※活動制限がありません)

次の4つの在留資格においては、制限を受けずに就労が可能です。

1 永住者 永住許可を受けた者
2 日本人の配偶者等 日本人の配偶者・実子
3 永住者の配偶者等 永住者の配偶者、我が国で出生して引き続き在留している実子
4 定住者 日系3世、外国人配偶者の連れ子等

1.技術・人文知識・国際業務

外国人労働者が日本企業で、技術者やオフィスワーカーとして働く場合に必要な在留資格です。技術者やオフィスワーカーとして働くには知識や技術が必要になるため、大学や専門学校で専攻した科目や、長年従事した職務内容との関連性がある場合のみ、在留資格が与えられます。それぞれの業務内容は次の通りになります。

技術:機械工学等の技術者、システムエンジニア 人文知識:企画、営業、経理などの事務職 国際業務:国際業務 英会話学校などの語学教師、通訳、翻訳の業務

2.特定技能

日本国内の労働人口の減少問題の対策として外国人労働者を雇用する際に設けられた在留資格です。とくに人材の確保が難しい14分野を特定産業分野と設定し、特定産業分野に限っては、外国人が現場作業などで就労することができるようになりました。

【特定産業分野】 介護職、ビルクリーニング業、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設業、造船・船用工業。自動車整備業、航空業、宿泊業、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

3.技能実習生

日本では、開発途上国の人材育成に協力することを名目に、外国人の受け入れをしている企業があります。日本の技術や技能を実践的に学ぶために、企業と雇用契約を結ぶ外国人労働者に付与される在留資格です。最長2年間の在留が認められます。受け入れ先としては、企業単独型と商工会など営利を目的としない団体が受け入れる団体監理型があります。外国人労働者側は技能が学べるメリットがありますが、賃金が安いなど劣悪な労働環境が問題視されています。

4.資格外活動(アルバイト)

「留学」「家族滞在」「短期滞在」「文化活動」「研修」の在留資格は就労が認められていませんが、地方入国管理局で資格外活動の許可を受ければ、アルバイトを行うことができます。この場合は、労働時間に制限があり、原則として1週間28時間と決められています。(教育機関が長期休業の場合は、時間制限に関係なく就労が可能)この原則を破ると、企業側も罪に問われるため、注意が必要です。

FOREIGNERS外国人雇用のメリット・デメリット

外国人労働者を雇用するメリットやデメリットは、どのようなことが挙げられるでしょうか。ここでは、実際の事例と併せて解説します。

メリット

  • 優秀な若手人材の確保
  • 外国人の意欲・意識が高く、日本人など周囲に与える影響が大きい
  • 社内の新しい価値観、視点、イノベーションが期待できる
  • 外国人が安定すれば、今後の人材不足に対応できる

など多くの点が考えられます。

従業員のスキルアップ

海外進出は必須であるという雰囲気を社長自ら積極的に発信し、グローバル化の意識をまず社内に浸透させることで、外国人労働者の受け入れ体制を準備して行きました。採用にあたっては外国人留学生と企業とのマッチングサイトや合同会社説明会、就活フェアなど様々なチャンスを活用し率先して採用を進めました。同時に、日本人社員に対しても外国人講師による英語教室を開催することで、外国人と日本人社員の相互理解を深める施策に注力しました。その結果、外国人だけでなく日本人社員にも意欲向上がしました。

人材不足の補填

労働力不足に悩むコンビニ業界でも外国人労働者採用は積極的に進められています。ある大手コンビニでは新卒採用の1割を外国人留学生枠として設定。留学生は日本に興味を持つ人が多いため、日本の文化を学べることから意欲を持って働けると好評で、従業員不足解消につながっています。また別のコンビニでは、これまで各加盟店に任せてきた外国人従業員の研修を本部主導で行うように変更。従業員だけでなく加盟店オーナーも研修に参加することで、外国人育成のノウハウを効果的に身につけられるように指導を行っております。

デメリット

  • 習慣や考え方、言語の違いからくる双方のストレス

などがあげられます。

FOREIGNERS外国人雇用を考える際のポイント

外国人労働者を雇用する場合には、次の点について検討してみて下さい。

どのような仕事をして欲しいのか

外国人を雇用することによって、どのようなことを望んでいますか?どのような仕事をして欲しいと考えていますか?一度、現場の人たちとじっくりと話し合いイメージをしてみてください。
そういったことが具体的にできておられる企業様には、しっかりとビジョンを持った外国人の方が興味をもたれることが多いです。その後のミスマッチも少ないです。
量の補足だけにとどまらず、企業のグローバル化、新たなビジネスチャンスが得られる可能性もあるのです。そのため、どのような仕事をして欲しいのかを具体的に考えることが大切です。

なぜ外国人を雇用したいのか

外国人を雇用するにはメリットもあれば、デメリットもあります。言葉や文化、慣習、生活習慣、宗教など企業側が考えなければいけないことは沢山あります。このような問題に直面する中でも、なぜ外国人を雇用したいのかを明確にすることが大切です。

社内の従業員の理解を得られるのか

外国人の受け入れ体制を整えるためには、社内の従業員の理解を得る必要があります。企業の従業員数が少ないほど、外国人労働者の受け入れに不安を覚えることも多いです。
外国人労働者の雇用をする前に、従業員の理解が得られるかどうかや受け入れ体制が整えられるのかを見極めることが大切です。そのためにも、従業員、実際に外国人が雇用されると想定される現場の方々に、必要性を丁寧に説明することがポイントです。皆さんの理解と協力がなければ、せっかく採用ができても早期退職になってしまいます。

FOREIGNERS外国人労働者の雇用後の対応

外国人を雇用する上では、考慮しなければいけないポイントがあります。ここでは、外国人を雇用する上で考慮しなければいけないポイントについて解説します。

日本人社員に教育をする

外国人労働者を雇用する場合は、社内の従業員の理解が大切です。受け入れ体制が不十分で不安を覚える従業員もいるでしょう。そのため、外国人と一緒に働く上での最低知識は指導しなければいけません。
考え方、価値観、相手の国の常識など、こちらも少し歩みよることで相互理解に繋がります。
日本人社員が外国人労働者の雇用を受け入れて、前向きに相手の国の文化や言葉の理解に励むことで、従業員の成長にもつながります。

外国人労働者に教育をする

外国人労働者に自発的に日本語を覚えてもらうことも大切ですが、社内での教育も大切です。
この会社ではここを大切にしている、企業独自の考え方や慣習。日本人なら自然に、時間とともに学べることであってもまた、外国人には通用しないことが多いです。社内風土を教育するということも欠かすことはできません。お互いに齟齬なく働ける職場環境作りが企業には求められます。

ハローワークに届出を提出する

外国人労働者を雇用する場合、日本人を雇用する場合と異なる点があります。それは、外国人労働者を雇用する場合は、ハローワークへの届出が法律上義務付けられているという点です。
不法労働などの問題を防止するために、ハローワークへの届出が義務化されています。外国人労働者を雇用保険に加入させる場合は、雇用保険の手続きと一緒に届出を兼ねることができます。外国人労働者を雇用保険に加入させない場合は、外国人雇用状況届出書を作成してハローワークに提出します。

契約書を作成する

外国人に内定を出した場合は、雇用契約書を結びます。雇用契約書は、就労ビザを申請する際に必要な書類です。そのため、就労ビザの申請前に作成する必要があります。また、契約内容に誤認がないように、外国人の母国語で契約書を作成することが大切です。

FOREIGNERS外国人雇用の課題点

外国人労働者を雇用する場合は、いくつかの課題点があります。

言葉

外国人労働者を雇用する場合は、言葉の壁が発生します。そのため、円滑にコミュニケーションが取れない恐れもあります。外国人労働者に対して社内で日本語を教育することもですが、社内の従業員にも英会話教室の講座を受講させるなど、外国人を受け入れる体制を整えることが大切です。
文化や国民性が異なるため、雇用した外国人からすると失礼にあたる言動をしてしまうかもしれません。そのため、相手を尊重した上で意志疎通を図るように意識もしましょう。

文化

異なる文化による発想の違いは、プラスになることもあればマイナスに作用することもあります。日本の文化では、空気を読んで意志疎通を図ることが重要視されていますが、外国人が相手であればそうはいきません。
物事を正確に伝えなければ、コミュニケーションが成立しない場合もあります。そのため、受け入れる外国人労働者の国の文化に関する必要最低限の知識は、従業員に教育しましょう。

離職・失踪

国外から優秀な技能者を雇い入れる場合に注意しなければいけない点は「3K」の職場環境です。技能系とされる職種にて、その労働環境や作業内容が「きつい・帰れない・給与が安い」であることを意味します。 このような3Kの劣悪な職場環境を改善しなければ、外国人労働者の離職や失踪につながってしまいます。外国人を雇用する前には、職場環境の見直すことも大切です。

不十分な受け入れ体制

日本の企業は、従業員数30名未満の企業が半数で、100名以下が2割程度と言われています。特に従業員数が少ない企業で、外国人労働者を雇用する場合は、受け入れ体制が不十分になりかねません。その結果、外国人労働者が孤立してしまうことも考えられます。

非難される労働差別

日本企業で技能実習生を雇用している企業は存在しますが、技能実習生への賃金未払いや不当扱いは問題になっています。国際連合でも「労働差別」と非難されているため、外国人労働者も日本の従業員と同様に扱いをしなければいけません。

技能実習生の不当扱いは問題

様々なところで、特に技能実習生の不当扱いによる事件が報告されています。大阪労働局は、カンボジア人技能実習生3人に賃金を支払わず、違法な時間外労働をさせたとして、大阪府岸和田市の企業と同社の代表取締役を最低賃金法第4条(最低賃金の効力)違反などの疑いで、大阪地検に書類送検しました。
同社は、衣料用繊維製品の製造・販売を営んでいる。代表取締役はカンボジア人実習生3人に、36協定を締結せず時間外労働と休日労働をさせた。時間外労働は平成30年9月30日~10月31日まで、休日労働は30年10月7日~11月3日までの間で認められている。10月の時間外労働は最長の者で86時間、休日労働は36時間に上った。休日労働は4回させており、この間は1日も休日がなかった。賃金不払いでは、30年10月分の定期賃金と残業代が全額支払われておらず、不払い賃金総額は約94万円に上るという。当時の大阪府の最低賃金額である、時給936円で働かせていたとみられる(引用元:労働新聞社)

FOREIGNERS外国人雇用に関する法律

外国人雇用に関する法律についても理解を深めていきましょう。

賃金

外国人労働者の人件費が安いと思う時代がありましたが、現在は基本、日本人が従事するに受ける報酬と同等額以上の報酬日本人同様の給与水準ではないと採用できません。
さらに、就労ビザの取得費用や渡航費用は企業負担となるため、日本人の労働者を雇用するようにも人件費が高くなる可能性もありますので確認しておきましょう。

平均給料が高い国TOP10
スイス 1073万円
ノルウェー 921万円
ルクセンブルク 899万円
デンマーク 835万円
オーストラリア 791万円
アイルランド 767万円
オランダ 685万円
アメリカ 645万円
ベルギー 641万円
カナダ 638万円
日本で働く外国人労働者を多い国TOP10
中国 203万円
韓国 210万円
フィリピン 24万円
ベトナム 36万円
ネパール 12万円
ブラジル※ 156万円
ペルー 36万円
オーストラリア 791万円
ニュージランド 400万円
インド 50万円

※ブラジルは年収格差が激しい国となっているため、最低賃金を記載し ています。

最低賃金より低い給与は違法

外国人を雇用する場合は、日本人の労働者と同等の賃金を保障する必要があります。従来は、劣悪な賃金で外国人労働者を雇用する企業もいましたが、外国人労働者を雇用する機会の増加に伴い、企業側は最低賃金を保障しなければいけなくなりました。 最低賃金は、最低賃金法について定められており、この法律を違反した場合は「50万円以下の罰金」の罰則が与えられます。

外国人労働者の平均賃金を理解することが重要

外国人労働者を雇用する場合は、日本国内で外国人労働者に支払っている平均月給・時給を把握することが重要です。


(出典元:日本政策金融公庫)


(出典元:日本政策金融公庫)

「技術・人文知識・国際業務」の在留資格を持った外国人労働者が正社員に該当しますが、自分自身の住まいの家賃や生活を給与から支払い、母国への送金なども行うため、日本人と同等の賃金が求められます。

労働時間

労働時間に関しても、労働基準法で厳しく制限がかけられています。原則としては1日8時間・週40時間を超えた労働は36協定を締結しなければ違法となります。労働基準法に違反した場合は「6か月以下の懲役または30万円以下の罰金」という罰則が科せられるため注意して下さい。
36協定を締結すれば決められた時間まで残業が可能です。36協定範囲内の残業は、外国人労働者に喜ばれます。また、留学生などのアルバイトの場合は1週間に28時間以上働くことが禁止されているので注意しましょう。

FOREIGNERS入管法改正案の閣議決定

2019年に入管法改正案が閣議決定されました。入管法改正案の詳細は次の通りです。

入管法改正案とは

入管法改正案とは、外国人労働者の雇用を増やす目的で成立しました。決められた内容は、新しい在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」の創設と出入国在留管理庁の設置となります。

入管法改正案が閣議決定された背景

入管法改正案が閣議決定された背景には、次のような理由が挙げられます。

・生産年齢人口の減少
日本国内の生産年齢人口は減少の一途を辿っています。少子高齢化の影響によって、日本国内では人材不足が問題視されているのです。そのため、求人広告を出しても人材が集まらないという状況が各地で起こりはじめており、今後も問題は深刻化されていくと予想されているのです。

・地方の労働者の過疎化
日本人労働者の人口は都市部に集中しており、地方での過疎化が進行しています。日本全体の生産年齢人口は減少していますが、都市部への人口は増加しています。地方の人たちが都市部へ移り住むというケースが多く見られているのです。若い世代が進学や就職を機会に地方から離れてしまうため、地方では労働力が特に不足している状況です。そのため、第一次産業分野や介護分野で慢性的な人材不足が発生しています。

・労働者不足による倒産の増加
人材を採用することができず、労働者不足を理由に倒産する企業も増加しています。2017年度の人手不足による企業の倒産は114件でしたが、5年前の数字と比較すると2.5倍にも膨れ上がっているのです。業界別だと「建設業」「サービス業」「製造業」での倒産が上位を占めています。

閣議決定された入管法改正案の内容

閣議決定された入管法改正案の内容は次の通りです。

特定技能を持つ外国人労働者の受け入れ

入管法改正案では、日本で働ける外国人の枠が広がります。新しく2つの在留資格が設定されました。

条件 在留期限 家族の帯同
特定技能1号 生活に支障のない会話ができる外国人
一定の知識や技能を持っている外国人
最長5年 不可
特定技能2号 生活に支障のない会話ができる外国人
熟練した技能を持っている外国人
更新可能 可能

14業種での適用

在留資格「特定技能」が適用される業種は14業種です。

分野 受入れ見込み数(5年間の最大値) 従事する業務内容
介護 60,000人 身体介護等のほか、これに付随する支援業務
ビルクリーニング 37,000人 建築物内部の清掃
素形材産業 21,500人 ・鋳造・工場板金・機械検査・めっき・鍛造・めっき・機械保全
・ダイカスト・アルミニウム・塗装・機械加工・陽極酸化処理
・溶接・金属プレス加工・仕上げ
産業機械製造業 5,250人 ・鋳造 ・鍛造 ・ダイカスト ・機械加工 ・塗装 ・鉄工・電子機器組立て
・電気機器組立て ・プリント配線板製造・プラスチック成形 ・金属プレス加工
・溶接・工場板金 ・めっき ・仕上げ ・機械検査 ・機械保全 ・工業包装
電気・電子情報 4,700人 ・機械加工 ・金属プレス加工 ・工場板金 ・めっき ・仕上げ・機械保全
・電子機器組立て ・電気機器組立て ・プリント配線板製造
・プラスチック成形・塗装 ・溶接 ・工業包装
建設 40,000人 ・型枠施工 ・左官 ・コンクリート圧送 ・トンネル推進工 ・建設機械施工・土工
・屋根ふき ・電気通信 ・鉄筋施工 ・鉄筋継手・内装仕上げ・表装
造船・船用工業 13,000人 ・溶接・仕上げ・塗装・機械加工・鉄工・電気機器の組み立て
自動車整備 7,000人 自動車の日常点検整備、定期点検整備、分野整備
航空 2,200人 ・空港グランドハンドリン
宿泊 22,000人 ・フロント・企画・広報・接客,レストランサービス等の宿泊 サービスの提供
農業 36,500人 ・耕種農業全般
・畜産農業全般
漁業 9,000人 ・漁業・養殖業
飲食料品・製造業 34,000人 ・飲食料品製造業全般
外食業 53,000人 ・外食業全般

FOREIGNERS外国人雇用が進んでいる企業事例

最後に、実際に外国人雇用が進んでいる企業事例についてご紹介します。どのように受け入れ体制を整えているのか企業の工夫もまとめましたので、ぜひ、参考にしてみて下さい。

富士ソフト株式会社(情報通信)

富士ソフト株式会社では、グローバル展開に対応するため、販売先の口に関連する戦略要因を積極採用しています。
【外国人雇用の受け入れ体制の工夫】
・アイルランド政府産業開発庁の提供する学士卒業生海外企業派遣プログラムを採用し、英語で仕事を進められる環境を整える
・職場活性化のために、海外の大学生や国内の留学生などをインターンシップ生として3ヶ月程度受け入れる
・役員登用の機会は日本人社員と同等に与える

カシオ計算機株式会社(製造業)

カシオ計算機株式会社では、ダイバーシティを推進するために積極的に外国人労働者の採用が行われています。
【外国人雇用の受け入れ体制の工夫】
・入社後のキャリアプランがイメージしやすい職種別採用を実施
・イスラム教徒である外国人労働者のためにお祈り部屋を設置するなど宗教に配慮
・「母国帰国休暇」を制度とし、外国人社員が有給を申請しやすい仕組みを創設
・外国人社員のためにビジネス日本語能力テストの受験料を補助し、円滑なコミュニケーションを促進